「……それ本気で言ってるの?」

杏奈は私の顔を見て心配そうに見つめる。

「はっきり言うとわかんない……
けど、もう過去と同じ過ちをしたくないから……」

私の意志はなぜか固く、
杏奈をすぐ説得できる程だった。

「わかった……けど、無理しないで?」
「え?」
「隆に助けを求める時はちゃんと頼って。
隆が必要だと思ったら
無理やり暗示をかけないで?
それじゃないと実彩、
誰も信じれなくなるよ?
それがもし、私やゆかりんだとしても」

杏奈の顔はどこか暗かった。

それはきっとこの行動の全てが不安なんだろう。

「うん、わかった。約束する。
それと……ゆかりんと直人
まだどこかにいるかな?」
「え?どうかしたの?」
「二人にもお願いしなきゃ。
あんまり同じ仕事をさせないでって」

すぐ始めないと……
私の気持ちが深くなる前に……

「そ、っか……呼んでこようか?」
「うん、ごめん」
「ううん、大丈夫ちょっと待ってて?」

そういった杏奈の笑顔は若干引きつっていた。

……何かしたかな……?

そんな不安を抱きながらも
隣に置いてある本をパラパラと捲って
栞の挟んであるところから読み始めた。

ー「風磨!!」

すると病室の窓から声が聞こえた。

窓の外を見ていると若い医師と美人な二人が抱き合っていた。

それはまさに映画の世界で絵になる。

そんな二人を見ていると何だか微笑ましくなって

「いいな……」

思わず声に出してしまった。

その瞬間私の頭の中にあるフレーズが出てきた。

“恋に落ちる音がした”

そのフレーズを浮かべると
隆弘と一緒に書いた詩を思い出した。

「あの時から恋してたのかな……」

そんなことを呟きながらも
再び本に視線を移した。

私の起こした行動が
誰かを不幸にするなんて知らずに……