「ねぇ、大丈夫?」
「……」
「実彩?」
「え?あぁ、ごめん」

杏奈に名前を呼ばれてハッとする。

「落ち込んでるのはわかるけど」
「だって……」
「もう、自分でもわかってるんでしょ?
あんな言い方するんじゃなかったって」
「でも……そうするしか……」

また目に涙が溜まってくる。

「そんなに落ち込むなら素直に
自分の気持ち伝えればよかったのに」
「そんなこと……」
「やっぱり実彩には無理か」

杏奈の思いつめた顔を見ると
申し訳なく思える。

「でも、お兄さんのことを打ち明けられたのは
一歩成長したんじゃない?」
「うん……」

隆弘は信用出来たから……

私が精神的に何か抱えてるっていうのも
きっと気づいてただろうし……

「実彩はさ、やっぱりどこかで隆を
求めてるってわかるの?」

そんなの……

「あたりまえじゃん。
それじゃないとあんな嘘つかないよ」
「だよね、でも何か引っかかるんだよね」
「……へ?」
「いや、実彩が素直になれないのは
十分わかってる。
ちゃんと原因だってあるんだからわかってる。
けどね?こんなこと言うのは悪いんだけど
隆ってあいつと似てない?」

ドクッ……

その言葉に冷や汗が背中を伝う。

「外見とか内面とかそういうのは全然違うよ?
そんなん隆のほうが全然いいし。
けど、実彩から隆への対応があいつに似てる気がするの」
「……どういうこと?」
「だってあいつのこと求めてたでしょ?
それで結果的にあぁなっちゃったんだし。
別にこれで隆と同じっていうのは嫌だけど
実彩が壊れないか……心配」

嘘……私そんなに……

「私そんなに隆に依存してる……?」
「……あいつ以上にね……」

私は下を向いて決意をした。

「決めた」
「……へ?」
「私、もう隆弘に近づかない」
「……え?それって」

杏奈は驚きを隠せない様子で私を見た。

「隆弘から離れる」