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ーコンコン

ドアをノックして開けると
そこには目を真っ赤にした
実彩と杏ちゃんがいた。

これは……ヤバい時に入ってしまった。

「え、ごめん……入っちゃダメだったよな」

俺は来た道を戻ろうとすると

「大丈夫、実彩と話したいんだよね?
入って大丈夫だから、ね?」

杏ちゃんが立ち上がって
俺をベッドの隣の椅子に座らせた。

「ごめんね、泣いてて。
でも勘違いしないで?
今のは実彩のことじゃない、私のことだから」

そう言って杏ちゃんは病室を出て行った。

実彩を見てみるとまだ目が腫れている。

「ごめんな?邪魔、だったよな?」
「ううん、大丈夫。
ごめんね、さっき気絶しちゃって」
「いや、こっちこそ。
もう大丈夫?」
「うん、大丈夫。
全然頭も痛くないし」

実彩は無理やり笑顔を作って
俺をチラッと見てから
再び視線を下に移した。

「私ね、小さい時兄を失ってるの」
「……え?」

いきなりのことに俺は目を見開いた。

「お兄ちゃんは私より4歳上だった。
スポーツが出来て、優しくて。
そんなお兄ちゃんが大好きだった」

下を向きながら手を弄ぶ実彩。

「けどね、お兄ちゃんは私のせいで死んだの。
私がすべり台から落ちたから」
「……え?」
「私ね、その日お兄ちゃんと二人で
近くの公園に来てたの。
二人ですべり台で遊んでたら
蜂が私のところへ飛んで来たの。
それで私すべり台の上で暴れてたら
バランス崩してそのまま下に落下、
するはずだったのに……」

実彩は白くて細い腕で涙を拭う。

「お兄ちゃんが私のこと引っ張ったから
代わりにお兄ちゃんがバランス崩して
そのまま下に落下したの……」
「そんな……」

実彩の顔を見てみると冗談を言ってるような
顔では決してない。

「だからね、それから全部怖くなって
過去を思い出しちゃったり
考えすぎたりすると頭痛が起きるの」
「そっか……」
「だから、ごめんなさい……
私、隆弘のそばにはいられない……」