「ご、めん。たまたま通りかかっちゃって……」

無理して笑う実彩に心が張り裂けるように痛くなる。

「実彩あの違うん「っていうか、私も隆弘のことそんなふうに思ってなかったし全然大丈夫だからさ?心配しなくていいから」

実彩はそのまま黙って気まずそうに顔を逸らした。

「実彩ちゃん「あ、そうだ。光!!今日私やっぱり行けなくなっちゃった」
「……え?」
「用事思い出しちゃったんだ。ごめんね?またの機会に誘って!!」

わざと明るくしようとする実彩に申し訳なくなる。

「あの「じゃ、またね。バイバイ」

俺に目を合わせることなく実彩は逃げるようにエレベーターに乗った。

……マジ最悪……

「お前のせいで断られちゃったー」

隣の光はぶーっと顔を膨らませる。

「意地張んなよ」
「……うっせ」

そんなこと言いながらも俺は彼女のことが気になっていた。

「じゃあ、辻反省として俺になんか奢ってく「ごめん、ちょっと」

俺はそのまま階段を使って彼女を追いかけた。

ただ実彩に会いたい一心で。

会って何話すかなんて決めてない。

ただあんなことで彼女との関係を無駄にしたくなかったから。

「やっぱり好きなんじゃん」

そう光が笑ってるのなんて知らずに……

___________

一階に来て実彩を探すどこにも見つからない。

外に行ったと思い見てみるがもうこの辺にはいないらしい。

「どこ行ったんだよ……」

ブツブツと文句を言いながら俺はサングラスをつけて実彩を探す。

人込みと悪い視界の中で探すのは困難だったが俺はひたすら探した。

「なんでいねーんだよ……」

乱れる息を整えながら俺は実彩に電話を掛けた。

が、やはりあっけなく切られてしまった。

「クソッ……」

俺はもう一度辺りを見渡すと……

信号で止まっているサングラスとマスクを掛けて暗いブラウンの髪をなびかせて携帯をしまおうとしている人を見つけた。

間違いない、実彩だ。

「実彩!!」

俺はその人を目指して走り出した。