[完]Dear…~愛のうた~

「私が学校抜け出して繁華街歩いている時ナンパされてさ、めっちゃ怖くて震えてたら秀が助けてくれたの」
「秀が?」
「そ、それから急激に距離が縮まって付き合うようになった。それでいじめられてたんだけど秀がなんとかしてくれていじめはなくなったんだ」
「そっか、幸せだったんだね」
「うん、でもね?私達楽しい思い出よりもつらい思い出のほうがたくさんあると思うな」
「……え?」

するとゆかりんはクスッと笑って

「私のパパ……死んじゃったんだ」

寂しそうに呟いた。

「パパはね、ママと一緒にこの事務所を立ち上げて来た。なのにね、外国の飛行機事故で小さい子供をかばって亡くなったの」
「そんな……」
「だから精神的に病んで秀とも何回も別れた。けどね、別れた後いつも考えるのは秀のことばっかなんだよ……ちゃんと生活してるかとか新しい彼女出来たのかななんて。わかってる、心ではすごい好きなの。けれど、私にはそんな勇気ないし秀の迷惑になるだけだと思って秀とは1年以上他人だった」
「そうだったんだ……」

何だか聞いてはいけないようなことを聞いてしまった気がして申し訳なくなった。

「けどね、秀がChargeに入った時に私とまた出会っちゃったの。その時の気まずさは最悪だったね。けれどメンバーもみんな私達のことを知ってて背中を押してくれたんだ。それで私の家まで秀が訪ねて来てやっぱり好きだって言われてさ。やっぱり秀じゃないとダメだなって思った」

いーな……

幸せそう……羨ましい……

「だから実彩もそのうち誰か見つかるよ」
「そうかな……」
「そうだよー」

私にはもう恋愛なんて言葉いらないのかもしれない。

そう思いながらも私達はたくさん飲んで居酒屋を後にした。