「凄いでしょ?」

杏ちゃんが俺を見てそんなことを言う。

「私実彩に初めて会った時凄い感動したの。こんな人いたんだって。というより私と同じ歳なんて思えなかった。でもね、実彩はそこまでダンスが上手くなくて困っていたの。だから私は実彩と同じグループを組みたいって思って得意なダンスを一生懸命教えたの。実彩の上達は凄かった。だからたまに私と違うレッスンを受けることもあって不安だったの。けれどそんなこと忘れるくらい違う部屋から聞こえる実彩の声に勇気をもらってたの。5年という長い年月は掛かったけど……私は今実彩とグループを組めて凄い幸せだよ」

杏ちゃんは俺に微笑んで再び実彩に視線を変えた。

“不安だっていいんだよ?
一歩ずつ少しでもいいんだよ?
僕らはそうやって毎日何かを求めるんだよ
泣いたっていいんたよ?
諦めてもいいんだよ?
僕らはちゃんとこの地球に立ってるんだよ”

一つ一つ問いかけるように囁く実彩に凄いと思った。

実彩は本当に歌手なんだ。

PEACEのメインを任せれるくらい歌に夢を持っているボーカルなんだ。

実彩は本物の歌手だ。

これから歌手になる人は実彩を見習うべきだと思った。

実彩は天才的歌手だ。

そんな実彩がもっと欲しいと思ってしまった俺はどうしてしまったんだろう。

“もっと笑って?
もっと楽しもうよ
これからがSHOW TIME
きっとわかるはず
きっと見えるはず
私達が届けるよ君の元に
dream of all”

本当に実彩と一緒にデュエットしていいんだろうか……

段々そっちが心配になってきた。

俺達が実彩と一緒に歌ったら顔に泥を塗らないかって心配になってきた。

“心配しないで 私はここにいる
誰も見捨てたりはしないよ?
だから一緒にこの厳しい人生頑張りましょう
大きな壁超えて行きましょう”

俺は実彩が欲しいと思いながらも大きな不安に襲われていた。

ただわかるのは……俺なんかが実彩に叶わないってこと。