「マジ？」

その言葉に苦笑いする。

「実彩は鈍感だから気づかないけど私が聞いたら一発でわかるよ。あ、私達タメでいこうよ」
「マジ？そうだな、そうするか」
「本当は光に嫉妬したんでしょ？」

杏ちゃんには丸わかりか……

「まぁね。ちょっと距離が縮まったからそう感じたのかも」
「実彩誰にでも笑顔だからね。嫉妬するのはわかるかも。っいうか嫉妬した理由それじゃないでしょ？」

杏ちゃんの言葉に思わず首を傾げる。

距離が縮まったからじゃないとしたら……？

「隆くん実彩のこと好きでしょ？」
「……え？」

予想外の発言に俺はキョトンとしてしまう。

「あ、まさか気づいてなかった？じゃあまだ違うってことにしておくよ。でもどうだろうなー、実彩の歌聞いたら頭から離れなくなるよ？」

杏ちゃんの視線を辿っていくと実彩と目が合った。

すると実彩はガッツポーズをして俺に“がんばる”と言ってきた。

その瞬間流れ始めるイントロ。

この曲調はきっとアップテンポ。

イントロが流れた瞬間実彩の顔が一気に変わる。

さっきまでののほほんとしている感じは感じられない程目つきがしっかりとしていてでも凄い希望に満ち溢れている実彩は俺の知っている実彩ではない。

そして実彩が大きく息を吸った時俺は夢を見ている感覚がした。

「え？……嘘だろ？」

実彩の声を聞いた瞬間俺は鳥肌が立った。

だって実彩は俺が想像しているより遥かに歌が上手かったから。

高くて透き通って綺麗な声なのにドスの効いた声まで出せる。

癖のある歌い方で感情が入りやすい。

そしてアクセントや強弱がついていて天使のような声だ。

そして何より一つ一つのフレーズを大事に歌っているからとても頭に入ってくる。

そして感情を入れて歌っているため実彩は自由に歌っている。

その光景に思わず身震いがした。