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「送ろうか?」
「ううん、大丈夫ありがとね」

私は帰る時に隆弘に見送られて会社を出た。

「あ、実彩」

何か思い出したような声で私を呼び止める隆弘。

「ん?」

その声で振り返ると……

「連絡先交換しない?」
「え……?」

私の一番聞きたかった言葉が隆弘の口から聞けた。

「え?いいの?」
「うん、まぁ実彩がいいならだけどさ?」
「じゃあ……交換しよっか」

私なんて生意気な……!!

上から目線で素直になれないし!!

「オッケー、ありがとう。ちゃんと連絡するから」

そんな私に何も文句言わない隆弘はどれだけ心が広いんだろ……

「え?連絡なんてすることあるっけ?」
「んー、普段はしないけど実彩は特別だから」

ーキュンッ

え?え?え?

今私の胸がキュンッて鳴った……

ってか特別って……隆弘自覚してるんだかしてないんだか……

隆弘の顔を見ると余裕そうに笑って私を見ている。

……自覚はなさそうだね……

「じゃ、私行くね?」
「うん、気をつけてねー」
「ありがとじゃーねー」
「バイバーイ」

そうして私達は別れた。

何だかさっきからドキドキばっかりしてるし……

隆弘が気になってチラッと振り返ると……

「え……?」

隆弘もタイミングよく私と一緒に振り返って目がバッチリ合った。

すると隆弘はニコッと爽やかな笑顔で片手をあげた。

そんな隆弘に私は軽く手を振って足早にその場から逃げた。

なんだろう……この気持ち……

「うわっ!!」

私は思いっきり電柱にぶつかった。

「痛たたたー……」

よかった変装してて……もしバレてたら記事に書かれちゃうよ……

なんて呑気のことを考えながら私はこの気持ちに気づくのを後回しにした。