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最近、私は違和感しか感じない。

あんなに普通に生活してたのに、
ただなくなっただけで
こんなに違和感が出るなんて。

そっと右腕を見つめる。

その腕はもうしっかりと巻かれていた包帯はなく、
二周り小さくなった腕が真っ直ぐ伸びている。

そう、私の右腕が治ったのだ。

それは3日前のこと。

何だか朝起きると胸騒ぎがして
包帯を替えようと思い、
腕を持ち上げて見て気がついた。

そのままタクシーで病院に向かうと
異常もなく、しっかりと完治していた。

お医者さんはこれにびっくりしていたけど、
私の体力はそこそこあったみたいで、
治りが凄い速かったみたい。

「実彩、行くよー」

そんなことを思い返していると
前から杏奈の声がした。

その声に反応してそのまま足を進める。

きちんと右腕でキャリーバックを握って。

「よかったね、旅行前に完治して」

私は杏奈の横に並んでその言葉に頷く。

「あーぁ、真ちゃんと5日も離ればなれなんて
私生きていけるかな……」

そんなことを呟く杏奈に苦笑い。

生きれるに決まってるでしょ。
人がそんな簡単に死なないっつーの。

と、心では鋭い突っ込みをいれながら。

「あぁ、恋するとこんな気持ちになるのね。
初恋なんて淡いもんだと思ってたけど、
叶ってみると意外と濃いねー♪」

あはははー。

絶対声が出たら棒読みで笑ってた。

最近、杏奈を見てどうしても、
腹立たしくなることがある。

それは幸せなくせに、幸せそうじゃないこと。

たくさんノロケながらも
まだ欲を言っている杏奈に
イライラすることがある。

まぁ、杏奈の初めての相手だから
あまりまだ学んでないから甘く見ているけど、

もっとつらい恋をしている人もいるんだよ……?

杏奈より、私よりつらい恋をしている人。

そんなことを並びながら考えて
これから乗るロンドン行きの飛行機を
ただぼーっと眺めていた。