「……ふざけんなよ」

我慢出来なくなってそんなことを口に出していた。

俺が違和感に気づいたのは振り返って
どこにも実彩がいなかったから。

慌てて来る道を辿って行くと、
財布を抱えて店を見ている実彩に出会った。

「実彩」

そう言おうと思ったとに、俺の思考が止まった。

だって、実彩は俺の目の前で
財布を手から落としたから。

それを拾おうと手を差し伸べようとした時、
俺は気づいてしまった。

実彩の足がとんでもないくらい震えていることに。

俺は驚いてそのまま視線を実彩の目の前に移す。

そこには、長身の日に焼けた肌が目立つ男と
シェイクを片手に実彩をジロジロ見ている茶髪の女。

「実彩が有名になるってわかってたら
こんなことしなかったのにな」

その言葉で俺の頭の中で何かが繋がった。

そして震える実彩の体は
二の腕のところをギュッと掴んでいた。

間違いない……

こいつらは実彩を傷つけたあの二人だ。

「そうだよ、私も実彩が有名になる
なんて思わなかったから。
実彩には本当に感謝してるの」

そしてその二人の言葉で俺の糸がプツンと切れた。

こいつ、人をナメやがって……!!

気がつくと俺は実彩の前に立って
二人をジッと見つめた。

「え、もしかして……Chargeのタカじゃない!?」

俺を見る限り騒ぎ立てる女。

「うるせぇ、黙れ。
お前もう一回さっきのこと言ってみれよ」

すると自分の彼女をバカにされたのが嫌なのか
男は眉間にしわを寄せた。

「あぁ?テメェ、俺らに何の用だよ」
「だからさっきから言ってんだよ!!
お前、実彩が有名になるってわかってたら
あんなことしなかったって?
だったら、実彩が有名にならなかったら
お前らは実彩を傷つけ続けたのかよ!!」

俺は怒り狂って男の胸倉を掴んで威嚇した。

「へー、やっぱりあの噂って本当だったんだ。
実彩とあんたが付き合ってるって噂」

フフッと鼻で笑う男。

「勝手に言ってろ。お前みたいな奴に
そんなこと言われても何とも思わねぇ」
「まぁ、付き合ってないと知らないか。
俺達が昔実彩に何をしたのか。
まぁ、今となってはどうでもいいけど?」

そしてその言葉に抑えれなくなった怒りを
俺の拳が男の頬へと伝えた。