しばらくして、私と隆弘の間に距離が生まれた。

それを利用しようとして
私はそのまま来た道を帰って行った。

だって、隆弘といると
何だか心が落ち着かないから。

だから、私は逃げるようにして
来た道を帰っていた。

こんなこと、しなければよかったのに……

そう気づいたのは、すぐのことだった。

「実彩?」

聞いたことある声に私は思わず
目を向けてしまった。

そして私はそのままバタッと財布を落としてしまう。

「実彩、だよな?久しぶり」

何で、何でいるの……

私の足は恐怖で震えていた。

「ねぇ、シェイク何味がいい?」

そしてまた、隣に来た人にも怯えていた。

「あれ?もしかして、実彩?」

どうしてここにいるの……

どうして、拓真と萌がここに……

「実彩、元気だったか?
最近怪我したって聞いて驚いたぞ」

拓真が私に一歩近づいてくると同時に
私は一歩下がっていく。

「実彩、一躍有名になっちゃって
私の鼻もピノキオみたいになっちゃった」

そして私は無意識であの大きな傷跡を腕で隠した。

すると、拓真の顔が一気に歪む。

「俺、実彩にひどいことしたよな。
実彩が有名になるってわかってたら
こんなことしなかったのに」
「そうだよ、私も実彩が有名になる
なんて思わなかったから。
実彩には本当に感謝してるの」

やめて、近づかないで……

これ以上近づかれたら
何も出来なくなる気がする。

お願い、これ以上近づかないで……

そう思った時……

“死んで?”

あの日のことを鮮明に思い出してしまった。

そして私の頭が恐怖一色に染まって
何も考えれなくなった時……

「……ふざけんなよ」

その声で私の意識は完全に戻ってきた。

私の好きな声が隣で聞こえたから……

ねぇ、どうしてあなたは私を助けてくれるの?

“隆弘……”