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「ごめんな……」

俺に背を向けてシクシク泣く実彩の顔は
どうなっているのかわからない。

「実彩は我慢し過ぎだ。
それが原因でこの症状に繋がっている。
そんなことぐらい実彩が一番わかってるだろ?」

それでも実彩は俺に顔を見せない。

そっと実彩を抱きしめて
そのまま軽く背中にキスを落とす。

すると少し体をよじる実彩。

「実彩は自由になったほうがいい。
それが一番、実彩の為になるだろ?
実彩が望むなら、俺はそうする」

そう言って俺はベッドから降りて着替え始めた。

「じゃ、元気でな?」

俺が扉のほうに向かおうとした瞬間

ーギュ……

俺の背中に優しい温もりを感じた。

細い腕が俺の腹部に回っている。

「実彩、離せ」

実彩は緩めるどころか段々腕の力を強める。

「頼む、実彩離してくれ。
これ以上いると何するかわからない。
俺だってまだ完璧に治った訳じゃ「グイッ」

話している途中に思いっきり後ろに引っ張られた。

そしてそのまま回転する俺の体。

するとバチッと目が合う俺達。

その瞬間時が止まった感覚に犯される。

そしてそのままゆっくりと実彩の顔が近づいていき
二人の唇はそっと重なった。

その行為をすると、俺は止められなくなる。

だって、本当は実彩を求めているんだから。

こんなにも切なく、そして甘く。

段々深くなるキスに俺は必死になっていた。

そして再び実彩を押し倒してしまった。

唇を離して目を合わせる。

そして、実彩の顔を見てハッとする。

だって、それはあの時と同じ顔をしてたから……

実彩と杏ちゃんが喧嘩をして、
初めて俺に見せてくれた本当の気持ち。

その嬉しさを俺は忘れていた。

実彩は訴えている。

あの時と同じように……

ー「行かないで……」