_______

ーコンコン

俺はいつも聞こえる声が聞こえないことに
違和感を覚えながらも部屋の中へ入った。

そして目に止まったのは……
俺を見てジッと涙を流している実彩。

その姿に胸がどうしようもなく痛くなる。

いつの間にか体が動いていて、
そのまま実彩を力強く抱きしめる。

実彩も俺の体に手を回して涙を流す。

「ごめんな?こんなことしか出来なくて」

すると実彩は顔をうずめながらも首を横に振る。

そしてそのまま顔を上げて
何かを訴えるように俺を見つめる。

「どうした?」

すると実彩はそばにあった
小さなホワイトボードを手に取って
何かを書き始めた。

“私の病状聞いた?”

前に見たことがある
右上がりの丸い文字でそう書かれていた。

「うん、聞いた」

するとさっきの文字を消してまた何かを書き始めた。

“じゃあ、何が原因かも聞いた?”
「……うん」

俺は答えるのに少し抵抗があったが、
椅子に座って素直に答えた。

“勘違い、してる?”

ん?勘違い?

「どういう意味?」
“私が、隆弘のせいでストレスになったとか”

心配そうに見つめる実彩は
本当に弱々しく見える。

だって、そんなことを思って
涙を流していたんだから。

「そんなこと思ってないよ」
“本当に?”
「うん。
だって、実彩は俺の前で笑ってただろ?
あれは偽ってた笑顔?」

実彩は首を大きく横に振る。

「なら、違うってわかるから」
“ありがとう”

実彩はクシャッと笑って
感謝の言葉を書いたホワイトボードを横に置いた。

でも再び困ったような顔をして
ホワイトボードにペンを進める。