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医師からの宣告は失声症。

実彩は声が出なくなってしまったらしい。

原因は極度のストレス。

それは一度のものではないらしい。

今はストレスを抱えていなくても
過去のストレスが蘇って発症することもある。

実彩は、どっちだったのだろうか……

どっちも考えられる気がする。

「はぁ……」

俺はそのまま部屋に戻ってカレンダーを見る。

「あと3日か……」

俺は順調に回復をしてきて
精神的にも安定して来たので
3日後退院できることになった。

だけど、実彩は……
いつ退院出来るかわからないらしい。

実彩はまだ腕の回復は出来ていないが
精神的には安定してきた。

リハビリだってそろそろ終わってきたし。

けれど、また違う症状を起こした。

一体、いつになったら実彩は回復するんだ?

俺はそんな思いに頭を抱えながらも窓を眺めた。

すると目に入ってきたのはベンチに座ってる男女。

恐らく恋人同士だろう。

肩を並べて笑い合っている姿に目の奥が痛くなる。

俺達も、あんな風に普通の生活だったらな……

芸能人という肩書きに縛られなければ
俺達は極普通の生活を送っていたのだろう。

きっと今頃は大学に行ってナンパでもしてんのかな……

けれど、それと同時に実彩の顔が浮かぶ。

果たして実彩とは、普通の生活をしていて
出会えてたのだろうか。

実彩も普通の生活をしていても
俺達はこの世の中で出会っていたのだろうか。

きっと、確率は限りなく低い。

だって、俺達は恵まれていない運命なんだから。

俺達は偶然と必然の間で生まれた愛があり、
それを育てるには様々な試練を与えるんだ。

神様は最初、
きっと俺達を結ぶ運命を計画してなかった。

だけど、俺達は運命を変えた。

たとえ、俺達が出会う運命じゃなくても、
俺達は出会って恋をしたのだから、
やらなければならないことがあるはずだ。

「よし……」

俺は大きく伸びをして軽く声を出した。

そしてベッドから立ち上がり、
そのまま病室を後にした。