「噂って?」

私は思わず目を逸らして聞いてみた。

多分、あれ……

「隆とMISAさんが付き合ってるって話。
本当にそうなんですか?
まぁ、前海で会った時も二人でいましたし……
ビルで二人共巻き込まれたって言ってましたよね?」

う″……鋭い。

私は何を言い返すことが出来るんだろう……

「そ、そんなことないですよ?
ただの仕事相手で仲がいいんです。
海には曲を作りに行って、
ビルにはパーティーの品物を買ってたんです。
ほら、この間Charge3周年だっからさ!!」

何とも痛い言い訳……

私がそんなこと言われたら、信じ難い……。

「本当ですか?」
「うん、本当本当!!
変な誤解招いちゃってすいません」

そういうと麗さんの顔が一気に笑顔に戻った。

「なーんだ、つまんない!!
てっきり付き合ってるのかと思ってました。
付き合ってたらお似合いなのにー!!」

そしてもちろん声のトーンも戻っていた。

ねぇ、それ本当に思ってる?

本当はまだ隆弘のことが好きなんでしょ?

じゃなかったら、抱きついたりしないでしょ?

私に警戒してるんじゃないの?

「私、隆とMISAさんのこと応援してます!!
頑張って下さいね?」

応援なんて、してないくせに……

私の頭の中は汚いことばかりだ。

「うん、ありがとう。
じゃ、私はここで帰ります。
隆弘によろしく伝えて下さい」
「はい、こちらこそありがとうございました」

私はそのまま逃げるように部屋の中へと入った。

そして目からは冷たく涙が流れてきた。

「う……グスッ……っ」

そしてそのまま座り込む。

“おぉ!!どうした!?”
“お見舞いに来ちゃったー、感謝してよね”

隣からは聞きたくないような声が私の耳に聞こえる。

嫌だ、嫌だ……

何も聞こえないくらい耳を塞ぎ込んだ。

泣いたってどうしようもないことなんてわかってる。

けど、私はこの涙を止める方法は知らない。

もし、それがあるとするならそれは……

ーギュッ……

「……え?」

突然背中に温もりを感じた。

なぜだろう、もう涙は止まっている。