「これが今の俺なんだ」

今までに聞いたことないような優しい声で
そう言うと彼は私達を強引に部屋から追い出した。

「ちょ、隆弘!!」

私は必死で扉を叩くけど
開けてくれる気配はない。

「なんで?隆弘ってば!!開けてよ!!
勝手にそんなこと言われてもわかんないよ!!
まだ話は終わってないでしょ!?
開けてってば!!」
「やめろよ、実彩ちゃん」

荒れ狂った私を止めたのは光だ。

「なんで?光には関係ない!!
私、絶対にあなたとは付き合わないから!!
私が好きなのは、隆弘だけなんだから!!」
「そんなの知ってんだよ!!」

トゲトゲした口調に驚いて抵抗するのをやめる。

恐る恐る光の顔を見ると
とんでもなく冷たい顔をしていた。

「そんなこと知ってんだよ!!
実彩ちゃんがあいつのこと好きなのも、
あいつもまだ実彩ちゃんのこと思ってんのも!!
けどな、こればかりはしょうがないんだ。
誰かが実彩ちゃんを守らないと
もうPEACEはダメかもしれないんだぞ?」

たしかにPEACEは大事。

そんなことわかってる。

わかってる、けど……

「それでも私達は愛を選んだの。
私達はそれでも愛を貫いたの。
だから、私も何かを捨ててでも隆弘を愛してる。
それぐらいの覚悟はある。
……バカにしないでよ」

そう言って私はそのまま自分の病室に戻った。

_____

あれから2ヶ月……

私はあの日から毎日隆弘の病室へと通った。

けれど、いつもそのまま帰らされる。

わかってる、隆弘が私を避けているのは……

だけど、どうしてもそのままでは帰れなくて
毎日の出来事を話しているの。

「今日ね、あの小説読み終わったの。
ラストが衝撃的でステキだったなー」

いつも、返事は返ってこない。

聞いてなくてもいい……

ただ、私が隆弘を感じて、
隆弘が私を感じて欲しいだけ……

「あの……MISAさんですか?」

そんな時、私は頭上の声に目を向ける。

「……!!」

そこにいたのは……

「こんにちは、どうかしたんですか?こんなところで」

ニッコリと可愛らしい笑顔で笑う麗さんだった。