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あの日俺は自暴自棄
という言葉が合うくらい荒れていた。

何も手につかなくなって、
隣から聞こえる笑い声に
苛立ちを感じ始めながらも
必死に音楽を聞いて感情を抑えていた。

そんな中

いきなり光が部屋に入って来た。

「んだよ……お前となんて話すことねーよ」

ヘッドホンを取って睨みつけると

「話があるんだ」

光は真剣な目で俺を見つめた。

その眼差しに耐えきれなくなって
俺は思わず目を逸らした。

「んだよ、話って」
「実彩ちゃんのことだ」

実彩という言葉に体が反応した。

それはずっと、気になっているから……

「実彩が、どうかしたか?」
「腕の痙攣は、やっぱり治まらない」

俺の視線は自然と下を向く。

そして、悔しさと憎しみで拳を握りしめる。

「だけど、他に異常はない。
だから、安心しろ」

“安心しろ”

その言葉は俺を苦しめる言葉でもあった。

「辻は……これからどうすんだ」
「わかんねぇ……
今はなんの言葉も浮かんで来ない」
「辻は、実彩ちゃんに会えるか?」

実彩のことは気になる。

けれど……

「今の俺じゃ会えない。
酷い言葉でも言うかもしれない。
また、実彩を傷つける……」

まだ顔を合わせるには程遠いようだ……

「じゃあ、実彩ちゃんは俺が守る」
「……は?」

何言ってんだよ、こいつ……

「どういう意味だよ、それ……」
「そのまんまだ。
辻が守れないなら、俺が守るしかねぇだろ?」

冷静とした顔がムカつく。

どこか余裕がある感じがして……

こいつに、実彩なんて任せれるはずがない。