[完]Dear…~愛のうた~

「あの日、実彩は死ぬと思っていたでしょ?
でも、ちゃんと生きている。
誰が助けてくれたと思う?」

もしかして……

「隆弘が助けてくれたの……?」

杏奈はうんうん、と何度も頷く。

あんな炎の中、どうやって……?

そんなの不可能にしか考えられない……

「ねぇ、私をかばって隆弘は……」

その言葉で杏奈はまた大量の涙を流す。

「ねぇ、そうなの!?
隆弘は私をかばって、死んじゃったの!?
嫌、嘘でしょ……!?そんなの嫌!!「落ち着いて実彩!!」

杏奈の悲鳴に近い声が部屋に響き渡る。

落ち着ける訳ないよ……だって、隆弘は……

「これから、真ちゃんが来てくれるから
その時に、全部話して貰えるから……」

杏奈は弱々しく私を包み込んだ。

「っ……何で……っ……」

杏奈の小さな腕の中で私はすがる思いで泣いた。

私の体の震えは、腕の痙攣を超える程、
苦しみに耐えているようにも感じられた……

_______

しばらくすると、部屋に真司くんが入って来た。

「実彩ちゃんごめんな?
これからつらい思いするかもしれへん」

真司くんは真剣に私の目を見る。

「大丈夫、そんなの知ってるから……」

杏奈は私の横に座って背中をさすってくれる。

「隆は、実彩ちゃんを炎の中から連れ出して
そのまま外に出たんや。
けれど、隆も怪我しとったから限界が来てたんや」

そう言われて血が流れていたあの足を思い出す。

「その後、二人は病院に運ばれて実彩ちゃんは手術。
隆は手当てを受けて、今は隣の部屋におる」
「……え?」

その言葉で私は杏奈を見る。

「隆、死んでないの……?」

杏奈のあの様子は死んだと言っているようなくらい
泣いていたから……私てっきり……

「死んで欲しかったんか?」
「なわけないでしょ!!冗談もいい加減にして!!」

軽く冗談を言ったんだと思うけど、
全く冗談に聞こえない。

「でも、隆は変わった」

真司くんの声で私は顔をあげる。

「変わったって……?」
「……実彩ちゃんには、もう会えんかもしれへん」

その言葉に私は全身が恐怖に包まれた。