すると、実彩はビクッとする。

「だって、私の為に隆弘は犠牲にしたくない!!
隆弘は大体、私のことなんてほっておいてくれれば!!」
「夢叶えるんじゃねーのかよ!?」

こんな命が危ない時に
言うことじゃないのかもしれない。

「俺達で夢与えてやるんじゃねーのかよ!?
実彩のこと待っててくれてる人達がいるんだろ!?
その人達の為にも飛んでくれ!!」

これで飛ばなかったらきっと実彩とは二度と会えない。

最後の言葉を、実彩に響いて欲しい……!!

すると実彩は一歩下がった。

「怖い、怖いよ……
けれど、隆弘が助けてくれるから……」

実彩はその瞬間高く飛び上がって
棚を飛び越えた。

だが……

「痛!!」

着地に失敗し、足を捻ったようだ。

実彩に近づいて体を起こし、
引きずるように実彩を抱えて
非常階段の扉を開けたその瞬間……

ーバーンッ!!

大きな爆音と爆風で俺達二人を引き離した。

そして……

ーバターンッ!!

非常階段の扉が閉まった。

……ドアの向こうには、実彩を残して……

_______

俺はそれから何回も何回も
ドアを開けようとしたが、開かなかった。

そして、何分経っただろうか……

ようやく、扉が開いた。

その瞬間、痛い程熱い炎が俺の体を襲う。

「実彩!!」

そんな中、俺は必死に実彩を探す。

すると……

大きな棚の下に人影があった。

間違いない、実彩だ!!

頭で考えるより、体が動いていた。

熱い炎の中、俺は実彩を連れ出して
そのまま出口に向かい、ドアを閉めた。

「実彩!!しっかりしろ!!おい!!実彩!!」

実彩はビクともしない。

火傷などの傷は見当たらないが、
きっと煙を吸い過ぎたんだろう。

「実彩!!頼む!!返事してくれ!!」

何度話しかけても実彩は喋らない。

自分が自分で情けない。

“受け止める”

そう言ったのに、俺は実彩を手放した。

自分が憎くて憎くてたまらない。

「実彩、俺の名前呼んでくれよ……」

だったら、少しは救われるのに……

俺の最後の願いは届かない……

あの笑顔がみたい、あの声が聞きたい……

ー「隆弘」

あの笑顔が忘れられない……

そして、あの歌声も、全て……

「ウワァーーーーーーー!!」

現実を恨むように俺はそのまま泣き崩れた。