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あれから約1ヶ月……
事件は起きた。

「隆弘、これからどうするの?」
「んー、実彩はどうしたい?」

俺達は行き着けの居酒屋でたわいのない話で
盛り上がっていた。

俺達は世間に隠しながらも交際を続けていた。

恋人らしいこともたくさんしたし、
何度も愛を確かめた。

「じゃー、久しぶりに前二人で行った
夜景が綺麗なところに行きたい!!」
「そこ行くの何回目だよ」
「じゃあ歌の練習でもする?」

俺達の運命がかかつたレコーディングは
一週間後と身近に迫って来ていた。

「何でオフなのに仕事やるんだよ」
「でしょー?じゃ、決定!!」

軽い実彩のノリで車を走らせる。

「夜道は危険ですからー頑張ってくださーい♪」

ベロンベロンに酔った実彩が助席で俺に話しかける。

「だからあんまり呑むなって言っただろ?」
「そんなに呑んでませーん♪隆弘も呑むー?」
「運転あるから」
「ぶー、冷たいなー♪」

そう言って実彩は眠りについてしまった。

薄着のTシャツとショートパンツの実彩。

冷たい風が外から車内に吹き込む。

そんな実彩にタオルケットをかけて
俺はあの海を目指して車を走らせた。

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「実彩、起きろ」

あれから数時間後……

海に着いた為、実彩の体を揺らす。

「んぅ~……」

眠たそうに目をこすって俺を見る。

「着いたぞ?」
「ん……」

寝起きが悪い実彩は返事だけして
一人で砂浜へと向かった。

そんな実彩は子供っぽいと思いながらも
俺は実彩を追いかけた。

すると実彩は急に立ち止まり
その場にストンと座った。

そんな実彩の隣に座ると実彩がいきなり口を開けた。

「隆弘、私このまま海に飛び込んだら
どうなると思う?」
「え?」

驚いて実彩の顔を見ると実彩は真剣な表情で
海の先を眺めていた。