「隆弘が、好き……」

やっと言えたこの言葉。

言いたくて、言い出せなくて……

そんな矛盾した気持ちからスカッと解放される。

そしてそのまま、私は隆弘に身を任せる。

電話が掛かってきた時は本当にびっくりした。

出ようか迷ったけど、
何だか出なきゃいけない気がして
そのまま勢いに任せて電話に出た。

電話越しに聞こえる大好きな声。

だけどその声は弱々しくて
何かを抱えているようだった。

そして、一緒に歌を歌った。

しかも、私達が作った、
私達の為に作ったような歌。

この歌は大好きだ。

だって、隆弘のことしか考えれなくなるから。

本当はレコーディングしてCDにして、
いつでも私達の歌を聞きたかった。

けれど、もうそんなこといい。

だって、この歌を歌っている彼の声は
私しか知らないんだもん。

それが、たまらなく嬉しい。

そしたら、いきなり歌が止まって電話が切れて……

やっぱり距離が遠く感じちゃって
悲しくなって泣いてたら……

息を切らして立っていた隆弘がいた。

信じられない……

これは夢?錯覚?

いろいろなことが頭に浮かんだけれど、
彼に抱きしめられると現実に戻される。

温かい……爽やかな香り、程良く筋肉がついた体。

全てが欲しくなる衝動にさらさわれて、
私は何の涙がわからない涙が落ちてくる。

距離をとって会わない間に
前以上にどうしようもないくらい
……隆弘が好きになっていた。

「実彩……」

唇が離れるとさっきより優しく
抱きしめるられる。

「ん?」
「それ、嘘じゃない?」
「うん、本当」
「それはちゃんと恋愛対象として?」

そういえば、私酷いこと言ってたんだよね……

「うん、隆弘と同じ気持ち。
前言ってた言葉なんて信じないで?
あんなの……素直になりたくなかった嘘なの……」

すると隆弘は嬉しそうに笑って
私の頭をクシャッと撫でる。

「な、何?」

怪しい笑みに一歩下がる。

「実彩が素直なの珍しいなーと思って」
「バーカ、そんなんじゃないし。
もういいでしょ?帰るから!!」

私はそのまま隆弘の腕から抜けようとすると
もっと強く抱きしめられる。

「ちょ、何する「実彩」

甘い声で呼ばれてピタッと体を止める。

ゆっくり隆弘の顔を見ると真剣な表情で
私から目を逸らさない。

「実彩、俺も好きだよ」

ードクンッ……

胸が大きく跳ねた。

その綺麗な瞳に吸い込まれそうになる。

「実彩のこと、ちゃんと守るから。
俺はゆかりんみたいな存在になりたい。
大きくて、頼りになって、何でも言える人」
「隆弘……」
「だから、俺を信じて……着いてきて欲しい」

私は隆弘がそう言った瞬間飛びついた。

「あたりまえじゃん……
でも、無理にゆかりんにならなくていいよ?
私にとって隆弘は隆弘だからさ」

すると隆弘は私に笑いかけると
そのまま私を特等席に座らせてこう言った。

「これから二人だけで久しぶりに話そ?」

それだけで嬉しくて……

「うん!!」

でも、私には知らなかったんだ。

隆弘の身の危険が襲ってきているのを……