そのままエレベーターに乗り込み
目標の階へと向かう。

扉が開くと猛ダッシュであの場所へと向かう。

そしてそのまま勢い余ってそこの扉を開く。

するとそこには……

「隆弘……」

真っ赤にさせた目を少し見開いて
肩を落として弱々しいキミが
特等席に座っていた。

「隆弘、どうして?
もう会っちゃダメッて社長が「グイッ」

俺はそのまま実彩を立ち上がらせて
俺の腕の中へと連れ込んだ。

「なんでここにいんだよ……」

力強く、実彩を抱きしめる。

そう言うと細くて華奢な体は微かに震えていた。

「だって、だって……
わかんないけど、足がここに……
進んじゃうんだもん……」

実彩は涙声で訴えてから
俺から離れようとする。

けれど、俺はそう簡単に腕を緩めない。

「ここに来たら、隆弘に会えなくても、
香りとか、温もりとか感じれるかなって思ったら
いろいろ止まらなくなって……
気づいたら私、毎日みんながいない間
ここに立ち寄ってた……」

そう言うと実彩はゆっくりと
俺の背中に手を回してくる。

「それ以外に、理由あるんじゃねーの?」
「……え?」
「実彩、そう簡単に意志曲げないでしょ?
PEACEで何かあった?」

すると実彩はやっと俺の顔を見てこう言った。

「ゆかりん、私から離れちゃうんだよ……」

実彩の目からは大量の涙と
救いを求める眼差しが俺に向けられていた。

「数日前、たまたま聞いちゃったの……
秀とゆかりんの電話している内容。
ゆかりんが妊娠してるって……
妊娠って、ゆかりんママになるんだよね?
そしたら、私達から離れなきゃいけないんだよね?
私達のマネージャー替わっちゃう?
もう、ゆかりんじゃないの?
って思ったら怖くなって……
隆弘に会いたくなって……でも会えなくて……
どうしたらいいかわかんなくて……」

実彩は下から潤んだ目で俺を見る。

「隆弘が、欲しいって……」
「え?」

俺は思わず実彩の顔を真剣に見る。

「隆弘が、私には必要だって……
気づいちやって……
もう隠し通せないんだよ……
思いが溢れたみたい」

実彩は再び俺に手を回す。

「隆弘が、好き……」

俺は思わず実彩の顔を上に向けて
激しく優しいキスをした。

そしてそれを見守るように
俺達を繋いでくれたカエルが
実彩の特等席オモチャ箱の上から
俺達をジッと見ていた。