ー「大きな手を広げたら」
「キミとの手と重ね合わせたいんだ」

俺が不安になったら、すぐ実彩を頼ってしまった。

実彩は誰を頼る?

杏ちゃんとも喧嘩した。

時は過ぎたから仲直りしてるかもしれない。

けれど、実彩は空気が読める。

一度言われたことはしっかり守ろうとする。

そして、杏ちゃんの幸せをずっと願っている。

きっと実彩はしばらく杏ちゃんと
距離を置くつもりでいるんだろう。

そして、今まで頼ってきたのはゆかりん。

けど、ゆかりんと一緒にいられるのもあと僅か。

その後、実彩は誰に悩みを打ち明けるのだろう。

ー「まだちっぽけな自分だけど」

ーカラカラッ……

「いつか大事なものが欲しいんだ」

俺はそのフレーズを言い終わって立ち止まった。

ー「……隆弘?」

次の歌い出しは俺。

“僕らの未来が虹色じゃなくても”

フレーズは頭で回ってる。

けど……

「実彩、一回切るわ」
ー「……え?どうかし「ピッ」

俺は実彩の声を遮って電話を切った。

そして、俺はそのまま車に乗り込み走らせる。

実彩がどこにいるのか……

わかった気がする。

さっき実彩の声は電話越しとは思えない程
綺麗な声だった。

そしてさっき聞こえたあの音。

ーカラカラッ……

気持ち悪いがおもしろいあの音。

見た目は可愛いのに9時になると
必ずその音が鳴る変わった奴。

そいつに光がツボって買ってきた。

あの音はあそこしかない!!

俺はその場所につくと車を止めて
すぐに実彩がいる場所へと向かった。