[完]Dear…~愛のうた~

ー「……もしもし?」

細い声が耳に届く。

「実彩……」

消えるような声で名前を呼ぶ。

迷惑なのはわかってる。

けれど、実彩の声が聞きたい。

ー「隆弘……どうしたの?
私達会うのダメって「けれど、電話したらダメ
なんて誰が言った?」

なんとしてでも大好きな実彩の声が聞きたかった。

そうでもしないと、俺はどうなるかわからない。

ー「そうだけど……でも「俺と話すの嫌?」

俺は実彩が思っていないようなことをわざと聞く。

ー「ううん、そんなことないよ」

そうして、自分を安心させる。

そうでもしないと、崩れそうだ。

俺は弱い人間だから……

何かにすがりつきたくてしかたない。

ー「……隆弘?」
「ん?」
ー「泣いてるの?」
「……え?」

俺は思わず耳を疑った。

泣いてる?まさか……

「なんで?泣いてないけど」
ー「嘘つかないで……
声震えてるし、啜り声もちゃんと聞こえる」

そう言われて目元に手を当てると
少し濡れていて、冷たかった。

ー「ねぇ、隆弘」
「ん?」
ー「つらかったら、いつでも頼っていいんだよ?」
「……え?」
ー「迷惑かもしれないけど、
私が出来ることはしたい」

その言葉にまた一層涙が出そうになった。

なんで、こんなに優しいんだよ……

「じゃあ、一つ頼んでもいい?」
ー「うん、私に出来ることなら。何でもするよ?」

励まそうとしている声がすぐわかる。

実彩は俺を助けようとしてくれてるんだ。

「実彩、歌って?」
ー「え?」
「俺達で作った歌、歌ってくれよ」

俺は今、誰に何されようとも、
俺達が作ったあの曲を……
実彩の歌声で聞きたい。