[完]Dear…~愛のうた~

「……どういうことだよ」

俺はもう秀の顔は見れなかった。

「本当にすまないと思ってる。
俺のわがままで、みんなに迷惑掛けるなんて。
でも……こうするしか、お前らを守れないんだ」
「ふざけんなよ!!いつそんなこと言った!?」

俺は思わず立ち上がって怒鳴りつけた。

「お前オーディションの時言ってたよな。
俺と一生音楽やりたいって。
あの言葉は嘘かよ!?
俺達のことただの仲間としか
思ってなかったのかよ!?」
「違げーよ!!」

今度は秀が声を挙げた。

「俺だって、本当は抜けたくねーよ。
このグループが大好きだし、誇りを持ってる。
けどな、それだけじゃ、足りねーんだ。
それより大事なものが出来たんだよ!!」
「秀……」
「これは誰にも言ってねーんだけどな?
友香理の腹ん中に、俺達の子どもがいる」
「……え?」

その言葉で俺は思わず座り込む。

「俺達に、大事な子どもが出来たんだよ!!
だから俺は、そいつと友香理を守ってかなきゃ
いけねーんだよ!!」

もう俺は何も言えない。

これ以上秀を止めることなんて出来ない。

「これから生まれてくる子どもを、
危険で恵まれてない環境に与えたらダメだろ?
俺は父親として、覚悟を決めなきゃいけねーんだ」

秀は自分に言い聞かせるように呟いた。

「だから、もし何かあったらその時は頼む。
本当に無責任なのは十分わかってる。
そうならないことを願うけれど、
ChargeとPEACEをお前が守ってくれ」

そういう秀の目が真剣すぎて
俺は頷くことしか出来なかった。

「それと、俺が抜けたら
Chargeのリーダーはお前だ」
「……え?」

俺は思わず目を見開く。

「お前に、後を引き継ぐ。
Chargeを任せた」

俺の頭は真っ白だ。

リーダーという大きな役割を俺が背負うのか?

「お前なら出来る。絶対に。
信じてくれ。俺以上にお前は
Chargeを引っ張っていける」

秀は俺の手をそっと握って微笑んだ。

「頼んだ、隆。
俺が抜ける可能性は70%以上ある。
Chargeを守ってくれ。
Chargeを、任せた」

そう言って秀は溜まり場を後にした。