そっと唇を離すと、驚いたような顔で
私を見る隆弘。

「隆弘……」

隆弘を求めるように名前を呼ぶと
隆弘は私の頬にそっと触れた。

「実彩、ごめん……」
「……え?」

どうして謝るの……?

やっぱり、隆弘は私のことなんてどうでもよくて、
本当に杏奈の元に言っちゃうの……?

「……だ」
「え?」
「いやだ!!そんなのやだ!!行かないで……
杏奈のとこになんて行かないで……」
「「……へ?」」

マヌケな杏奈と隆弘の声が耳に響く。

「隆弘、行かないでよ……
私のそばにいてよ……」

私は涙で前が見えなくなってきた。

「もう二度と、現れないでなんて言わない。
あんな言葉嘘なの……!!
だから……どこにも行かないで……
隆弘、私のそばに……そばにんっ……!!」

私はいつの間にか口を塞がれていた。

腕を引かれて、体を引き寄せられて、
私を支えるように腰に手を回して……

「ん……」

隆弘は私に情熱的で深いキスを落としていく。

すぐそばに杏奈と真司くんがいるのも
すっかり忘れるくらい。

でも、私にとってそのキスは凄い心地良かった。

何だか凄い求められてる気がして……

息が出来なくなって、胸が苦しくなって。

こんなキスを一度は隆弘としてみたかった。

息が持たなくなって体を叩くと
隆弘はすぐ離れてくれた。

乱れた息を整えながら二人はそのまま見つめ合う。

いつの間にか杏奈と真司くんはいなくなっていて、
私達だけ二人きりになる。

「いつ、杏ちゃんを好きって言った?」
「……え?」
「そんなこと一度も思ってないけど?」

優しくクシャッと笑う笑顔に
胸が狭くなってキュンと音を立てる。

「ごめん、私あんなこと言って」
「別に気にしてないから、気にすんな」
「あんなこと一度も思ってないの……
ただ、ただ、私は「もう喋んなくていいから」

隆弘は私にさっきとは全然違う
優しいキスを落とす。

けれど、次第に深くなっていく。

私もそれに応えるように隆弘にしがみつく。

私は立ってることも不可能になり、
そのまま壁に押し付けられる。

腕を掴まれて固定され、
空気を吸おうと口を開けると益々深くなっていく。

甘い時間に浸りながら

このまま時間が止まってくれればいいのに……

そう思った挙げ句、事件が起こった。

「何やってるの?」