部屋から出てまず最初に向かったのは
Chargeのたまり場。

でも、誰もいなくて私はとにかく走り回った。

「どこ行ったのよ……」

元々体力がないのが原因だけど
もう私の体力は限界に近い。

そんな時……

「お前、あーちゃんに何したんや!!」

聞き慣れた関西弁が
少し離れたところから聞こえてきた。

「真司くんかな?」

真司くんなら隆弘の居場所を知ってるかもしれない。

しかも、あーちゃんって言ってた。

凄い剣幕で怒ってた気がする。

正直、杏奈にはあまり会いたくないけど、
杏奈の身に何か起きたら困る。

私は声が聞こえた方向に走って行った。

辿り着いたのはさっき軽くスルーしたロビー。

その奥には長身の真司くんが目に止まった。

真司くん!!

そう言って近づこうとした時……

私の目には信じられない光景が入ってきた。

凄い勢いで胸倉を掴んでいる真司くん、

その後ろにはぐちゃぐちゃになったメイクと
困ったような顔をしている杏奈。

そして、真司くんに捕まれてるのは……
私がずっと探していた……彼。

何か真司くんが怒鳴ったけれど、
私の耳には届かない。

それより、私の頭の中は汚いことでいっぱいだ。

どうして……どうして杏奈といるの?

私が来るまでの間、何を話していたの?

私には言えない話……?

隆弘は私より、杏奈のほうがいいの?

私にあれだけ尽くしてくれたのに、
私が突き放したから、杏奈に手を出したの?

私なんてどうでもよかったの?

あんなに信じてて、こんなに好きなのに……

私を好きって言ってたのは……嘘?

私は過去に戻った気分になりながら
一人で自問自答を繰り返していた。

いやだ……いやだよ……

私、いやだよ……隆弘までいなくなっちゃうの?

隆弘は……杏奈のところへ行っちゃうの?

いやだ……いやだよ!!

もっと、もっと私のそばにいて……!!

真司くんが手を挙げたと同時に

「隆弘!!」

私は彼の名前を必死に呼んだ。