[完]Dear…~愛のうた~

「ふふ、やっぱり愛されてるんだね。
こんな一途に愛されて実彩、幸せだろうな」

寂しそうに杏ちゃんが呟く。

「杏ちゃんだっているでしょ?」
「……へ?」

目を見開く杏ちゃん。

「真司、好きじゃないの?」

俺がそういうと杏ちゃんは目を下に向けた。

「好きだけど……真ちゃんはどうせ
私のことなんてどうでもいいんだよ……」
「なんで?」
「なんでって……いつも喧嘩ばっかだし、
最近なんて目も合わせてくれないし……
きっと、私のことなんて
ただの仕事仲間としか思ってなかったんだよ……
だから、実彩に八つ当たりしちゃったの。
ただ、私が勇気ないだけなのに……」

結構この二人、すれ違ってんな……

真司なんて杏ちゃんにデレデレなのに。

「杏ちゃん、Chargeの溜まり場に行きなよ」
「……へ?」
「今、きっと真司いるよ?」

すると杏ちゃんは困った顔をした。

「無理だよ、行ってもすぐ追い返されちゃう。
私そんな勇気ないもん……」
「大丈夫だって、あ、ちょっと待ってて?」

そう言って俺は携帯を取り出した。

そして、迷わず真司に電話を掛けた。

<どした?>
「あ、もう帰ってきてる?」

真司は今家出中。

だから寝泊まりは
何でも揃っているたまり場でしている。

<おん、今ゲームやっとったけど>
「そ、じゃ、真司暇そうだな」
「え!?真ちゃん!?ちょっと!!」

隣にいる杏ちゃんは
慌てて俺から電話を取ろうとする。

けれど、俺が立ち上がると届くはずがない。

なんたって、杏ちゃんは小さいから。

<別に暇なんて言ってへんけど?>
「実は、俺今杏ちゃんといるんだけどさ」
<……おん>

お、杏ちゃんって言ったらフレーズしたな。

「ロビーで泣いてんの、真司来てくんない?」
<……は?あーちゃんのこと隆が泣かしたんか?>

真司の低い声が俺の耳に響く。

「さぁ?」
<お前……許さん。
絶対そこから動いたら許さんからな>

すると通話が切れて隣でぴょんぴょんジャンプして
携帯を取ろうとしている杏ちゃんを見る。

「ここにいろって」

すると杏ちゃんの顔が一気に赤くなる。