【彩花 SIDE】


あの日。

クラスメイトの青木くんに「橘さん、元気?」と聞かれたときはドキリとしてしまった。


わたしはあのときの事件を引きずりながらも、元気でいたもりだったから。

仲のよい友達にさえ指摘されなかったことを青木くんに言われてしまったのだ。



青木くんは…どうしてわたしなんかに優しくしてくれるのだろう。


わたしは事件のときから男性だけでなく、誰も信じられなくなってしまった。


でも、青木くんの一言で少し救われた気がした。

わたしを閉じ込める、暗い闇の中に一筋の光が射し込んだ気がした。