「よいしょ」
夜。彩花の部屋で一緒にすごしていると、こんな声と共に彼女はいきなり窓を開けた。
外の冷たい空気が部屋に入り込む。
雪国の冬は容赦ないな。寒さのレベルが地元とは根本的に違う。
「ちょちょちょ、寒いって。閉めてよ」
「いーから。ちょっと来てみて」
いやいや、良くないでしょ、彩花さん。
アナタ、既に鼻の頭が赤くなってるよ。
そんな彩花に手を来い来いとされ、俺に窓際に来るよう促す。
ん、なんだろう…?
何かがいるのかな。
「ほらほら、見て?」
「ん?」
彩花が指をさす方へ姿勢をうつすと目が暗闇に慣れていなくて視界がぼんやりとしていた。
数回、パチパチとまばたきをすると満天の星空が目に入ってきた。
「スッゲー…」
自分のボキャブラリーの少なさを呪いたくなる。
こんな美しい星空を、自分の言葉で表現できないなんて、悲しすぎる。
とにかく、星が大きい。数も東京と比じゃない。
──“星が降って来る”
冗談抜きで、いつか何かの小説で見たこの表現がぴったりだと思った。
すぐそばで輝いているように見えるのだから。
ここからだと屋根が邪魔して北斗七星は見えないけれど、煌々としているのだろうということは容易に想像できる。