「まだ新しいクラスになって間もないのにさ、青木くんは先週わたしのこと“橘さん”って呼んでくれたよね。青木くんって人の名前覚えるの得意なのかなーって…」
やばい。
何て返せばわからねぇ。
俺が橘さんの名前を覚えていたのは、橘さんのことが好きだからで、俺は決して人の名前を覚えるのが得意な訳じゃない。
去年のクラスの女子で、顔と名前が一致してない人もいる。
「君のことが好きだからだよ」なんて言えるはずがない。
どうしよ…。
「えっと…」
「すみませーん。本借りたいんですけどー」
タイミングが良いんだか悪いんだか、邪魔が入ってしまった。
この日はこのまま仕事が終わったのだった。

