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《…………》


それから数日後。


俺はあるひとつの決して小さくはない決断をして、彩花に電話をかけた。


いつも通りの5コール目。彩花は電話に出た。


でも、いつも通りなのはそれだけで、彩花が決まって言う元気のよい『もしもし』は聞くことができなかった。


彩花には、俺がこれから言おうとしていることがわかっているのかもしれない。


「…彩花?」


《ねえ海斗。もうわたし、つらいや》


高校時代から、どんなにつらいことがあっても弱音は吐かなかった彩花が漏らした『つらい』の一言。


その一言が、俺の胸をしめつける。


固く、固く、しめつける。


「彩花…?」


《わたしのせいで海斗がつらいときにそばにいてあげられないのが、つらいよ…《


なあ、彩花。

彩花はいつからそこまで追い込まれていた…?


俺の知らないところで、一体何を考えていた?


「な、何言ってんだよ、彩花。確かに彩花に会えないのはさみしいけど、つらいことなんてない」


《今だって、海斗は泣いているのにわたしは涙さえぬぐえないんだよ。何も、できないんだよ》


「バ、バカ。泣いてなんかないし」