「見ててこっちが苦しくなるの。つらい思いをしている海斗くんを見て。そんな海斗くんが気になるのは、わたしと似ているからかなあ」


ほろほろと涙を流す彼女は、高校3年の秋、図書室で想いを伝えてくれた彩花と、ダブって見えてしまったんだ。


俺は初めて自分から里香先輩にキスをした。


頬に涙が伝った。


心が痛かった。


それなのに、キス深まるばかり。


部屋には唾液の絡む音が響くだけ。


顔を出した欲望が、そのまま引っ込むことはなかった。


何度も唇を離そうとした。


唇を離すのはいつでも可能だった。


でも、この最悪の選択をしたのはほかでもない俺だ。





確かに彼女を彩花に重ねていた。


でも俺は彼女に堕ちたんだ。


彩花がほんのり甘いレモンティーならば、彼女は微炭酸のレモンスカッシュ。


少し刺激的だけど、レモンティーには絶対に敵わない、気の抜けた微炭酸のレモンスカッシュ。


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