「まさか。わたしが酒豪だって知ってるよね。…って、やだな、そんな顔しないでよ。初めてってわけじゃないでしょう」


「里香先輩とは、初めてですよ」


なんで俺は、彩花以外の人にキスをされてこんなに冷静でいられるのだろうか。


「もう一回してみる?」


里香先輩は、俺の首の後ろに腕をまわし色っぽく笑った。


顔を俺の方に近づけ、唇が再び触れあう寸前で止めて里香先輩は言った。


「悲しい恋愛なんて、やめちゃいなよ」


「悲しい、恋愛…?」


「そう」


里香先輩はまた触れるだけのキスをして、俺から離れていった。


水を飲みに行ったのか、キッチンからは蛇口をひねる音が聞こえた。


悲しい恋愛…?


里香先輩は、俺が彩花と悲しい恋愛をしていると言いたいのだろうか。


そんなこと、ないはずなのに。


なのに、俺はそのことをすぐに否定できなかった。