──ギシッ
フローリングがきしむ音。
そっと振り向くと後ろにいたのは、里香先輩だった。
「すみません、起こしちゃいましたか」
真っ赤なルージュはさすがにつけていないが、里香先輩がまとう独特な雰囲気にドキリとした。
いやいやいやいや。
ドキリって、ダメでしょ。
俺は自分を叱咤するように舌を思い切り噛んだ。やっぱり、痛かった。
「水、いりますよね。ちょっと待ってください」
「いらない」
里香先輩はぶっきらぼうにそう言うと、立ち上がった俺の腕をグイッと引っ張った。
「えっ…!」
──キス、された。
彩花のとは違う、唇の感触に、体温が一気に落ちていくのがわかった。
「酔ってんスか」
自分でも驚くくらい、低く冷たい声が出た。

