ふたり肩を並べて歩く。

俺と橘さんとの間には距離があるし、何とも言えない空気が流れていた。

そんな空気を一蹴したくて俺は切り出した。


「橘さんは…本が好きなの?」


「へ?」


「あ、いや、俺ね。ホームルームが長引くなら俺が犠牲になって早く終わらせようかなって思ったんだよね。だから橘さんが本好きなら申し訳ないなあって」


本もマンガも、それなりに読むけど実は図書室は利用したことがない。
入学後のガイダンスか何かで入ったくらいだ。


「本はね、好きか嫌いかで言ったら好きだよ。でもそれは立候補した理由じゃなくて…。実はわたしも同じこと考えてたよ」


そして彼女は「あ、このことは内緒ね」と付け足した。