「…海?」
電車を何本か乗り継いでやっとたどり着いたのは県内にある海。
「もしかして、ここってアナクロ歌のPV撮ったのってところこだよね!?」
彩花ちゃんが目を輝かせて言った。
付き合ってからわかった、彩花ちゃんと俺の音楽の趣味が合うということ。
一緒にライブに行きたいという願いは叶わなかったけど、聖地で好きなものに浸るのもいいと思った。
「そうそう。彩花ちゃん喜ぶかなーって」
ここは何年か前に発売されたアナクロの曲のPV撮影地。
一応県内にはあるけれど、かなり遠くにあるからなかなか行けずにいた。
「嬉しいなあ。ボーカルのユウヤが歌いながらここ歩いて」
PVでユウヤがそうしたように彩花ちゃんもジャケットのポケットに手を入れて砂浜を歩いた。

