僕は君の名前を呼ぶ



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3月末。

彩花ちゃんがここを発つのを3日後に控えた今日。


俺はの一日をもらって彩花ちゃんをある場所に連れてきた。


持ち物はカメラと少しのお金と最低限のものだけ。


彩花ちゃんが隣にいなくなってしまう現実を忘れたくて。


すべて、何もかもを地元に置いて今日を迎えた。


いつも俺はヘッドホンを使ってるけど、今日はイヤホンだ。

ふたりで電車に揺られながら、ひとつのイヤホンを片耳ずつわけてアナクロニズムを聞いた。


「わたしの高校時代にはね、いつもアナクロがいたんだぁ…」


ほぼ貸切状態になった車内で彩花ちゃんがぽつりとつぶやいた。


「嬉しいときも悲しいときも、どんな瞬間を切り取ってもアナクロがいたの。その時々のわたしの気持ちにぴったりな曲と一緒に」


「うん…」