隣にいる橘は、うつむいているから表情が見えない。


「ここまででいいよ?青木。家もすぐそこだし…」


「えっ、でも…」


「ごめん。じゃあね。また、学校で」


橘はそれだけ言うと、家の方へ早足で去っていった。


初めての橘からの拒絶は、夜になっても蒸し暑い夏とは逆に、冷たい刃となって俺に突き刺さった。


手を離してしまったことを深く後悔した。


こんなに後悔するなら、離すんじゃなかった。


ぽつりぽつりと雨が降り出した。

…俺は、橘を傷つけてしまった?