その笑顔を見て、俺はさっき隆太の母さんに言われたことを思い出した。


──タイミングってかなり大事だと思うから…────。


今を逃したら、気持ちを言える日なんて二度と来ないような気がするんだ。


やっぱり俺は、この笑顔を隣で守りたい。


「あのさ、橘。俺っ……」


「…彩花……?」


俺の声は他の誰かに遮られてしまった。


振り向くとひとりの男が。


「夏樹…くん?」


橘の喉の奥から絞り出すような声。


「彩花も祭りに行ってたんだな。隣は…彼氏?」


俺は橘の手を離していた。

この男のことは知らないが、多分きっと……。

彼氏でも何でもない男がそんなヤツの前で手なんて繋げねぇよ…。