「うん、だいじょーぶ。久しぶりに食べたからかな、キーンってしちゃって」


「大丈夫ならよかった」


「…今日はありがとね」


「ん?」


うつむいていた橘が顔にかかった髪を耳にかけ、こっちを向いた。


「誘ってくれてありがと。嬉しかったよ」


──えっ。

びっくりした。

心臓が跳ねた。

時が、止まったかと思った。


橘がこっちを見て微笑んだ。

あの日、桜の木の下でそうしたように、今隣で微笑んでくれた。


「橘は……そーゆーふうに、笑ってた方がいいと思うよ。いいっつーか、似合う?っつーのかな」


気づいたら、こんなことを口走っていた。


「ふぇっ?」


今になって恥ずかしさが襲ってくる。
俺は頭をガシガシと掻いた。