『彼に他の女の子のかげもなかったし、あと少しって感じでそのまま卒業式になって…。彼からは何も言われず疎遠になっちゃった』
『今みたいにケータイでもあったらまた違った結果になってたのかもしれないけどね』と少しさみしそうに言った。
昔の思い出を懐かしむような目をしている。
『女の子が自分からアクションを起こせない分、いつでも男の子に引っ張ってもらいたいって思ってるものよ。別に、今日告白しろってことじゃないわよ?でもタイミングってかなり大事だと思うから』
『…はい』
いつも元気な隆太の母さんに、こんなことを話されるとは思わなかった。
『隆太にも海斗くんみたいに誠実になってもらいたいわっ!ハイ、これで終わりよ。いってらっしゃい』
そう言うと、帯をポンポンと叩き俺の背中を押した。

