【短編】君の数字



すると、レイは、


「それはですね……」


と、ゆっくりと話し始めた。


「おそらく、ミルディック星で経験したことが、あたかも地球で経験したことのように、記憶が書き換えられたのでしょう……そう考えるのが、1番自然ですね」

「そうなんだ……」

「そこには、お嬢様の願望も入っていたかもしれません」

「願望?」

「ええ」


レイは言った。


「こんな生活がしたかった……こんな恋愛がしたかった……などという願望です」

「あっ……」


レイの言葉には、なぜだか妙に納得するとこがあった。

確かに、そうかもしれない。

私が、地球で経験したかのような記憶には、私の願望も入っていたのかもしれない。

こんな風に暮らしたい。

こんな恋がしてみたい。

窮屈に生きてきた私には、そういう願望が強くあったのかもしれない。


「そっか……」


とにかく、私が、地球で18年生きてきたというのは、全て勝手に思い込んでいた記憶だった。


「とにかく良かったです」


お嬢様がご無事で、とレイは言った。


「王は、もう無理に結婚させるおつもりはないようですよ。これからゆっくり運命の相手を探していってください」

「…………」

「では、迎えの宇宙船を呼ぶ手配をしますね」


レイはそう言うと、手首に巻いた無線機で話し始めた。