「私は……」
レイは、再び口を開いた。
「お嬢様の記憶がなくなっていることはすぐに分かりました」
「え?」
「地球の生活に溶け込んでいるのを見た時に……そして、私と話をしても何も感じないのを見てはっきりしました」
「あっ……」
そうだ。
確かに、レイは初めて会った時、私にこう聞いてきた。
『私のこと、お分かりになりませんか?』
と。
あの時、私は『今日が初めてだと思います』と答えた。
だから、レイは『前世で会っていたのかもしれませんね』とキザな言葉でごまかしたんだ。
そうか。
あの時、レイは、私が記憶を失っていると分かったんだ。
「だから……」
レイは続けて言った。
「なるべく不自然にならないように、寄り添うことを心がけ、私は少し様子を見ることにしました。無理に思い出させようとすると、一生、記憶が戻らない可能性もあるからです」
「そうなの……?」
「記憶というのはとても繊細なもの……仮にお嬢様の記憶が戻らない内に、ミルディック星のことなどを話してしまうと、脳が拒否反応を示して、本当の記憶を脳内の奥に閉じ込めてしまう場合があります」
「あのね……」
私は尋ねた。
「レイの話を聞く限り、私がここに来てからまだ2ヶ月ぐらいなのに、どうして私には地球での記憶があるの?」
これも、私が気になっていたことだった。
私は、地球に辿り着いて、2ヶ月ちょっとのはず。
でも、私の記憶では、中学生の頃の思い出や、何年も前の思い出がいっぱいある。
それらは、全て地球で体験したこと。
このことも、不思議な感覚だった。

