【短編】君の数字




そうだった。

私は、見てしまったんだ。


あれは、お父様に婚約者を紹介された時。

私は、その人と握手を交わした時に、見てしまったんだ。

彼との相性は、確か26%だった。

だからか。

私はそんな相手と結婚するのが嫌で、この地球に逃げてきたんだ。

誰にも言わずに、家出のように飛び出したんだ。


あれ……?

ちょっと待って……

じゃあ……


「ねえ、レイ……」


私は、言った。


「レイはどうしてここに……もしかして、私を探しに地球に来てくれたの……?」

「ええ、私は、あの時の約束を守りにきました」


約束……?


「実は……」


レイは言った。


「私とお嬢様は、幼少からの付き合いでした」

「あっ……」


スパン!――


またひとつ記憶が戻ってきた。

そうだ。

私とレイは、小さい頃からの友達だ。


王家の娘の私は、自分で友達を選ぶことも、なかなか難しい。

だけど、王宮で働く父を持つレイとは、物心つく頃から仲が良かった。


スパン!――


「あっ……」


さらに、私は思い出した。

それは、ある日の会話。

何気ないあの時の会話だ。



――
―――
――――



「ねえねえ、レイ・ジョーナ、私、大きくなったら、行ってみたいとこがあるの」

「どこ?」

「地球っていう星なの。すっごく遠いんだけど、一緒に行ってくれる?」

「いいよ。お嬢様が行きたいんなら僕が一緒に行ってあげるよ」

「ほんとに! ありがとう!」



――――
―――
――



今なら、はっきりと思い出すことができる。

ぼんやりとではなく、細かい会話の内容まで。

確か、あれは私とレイが9歳の時。

地球という星があるのを知った私は、いつか旅行に行ってみたいっていう話をしたんだ。

レイは『僕も一緒に行く』と約束してくれた。

あの約束を覚えていてくれたんだ。