ちょ、ちょっと待って。
じゃ、じゃあ、私は……
ひょっとして……
「ね、ねえ、レイ……」
私は、恐る恐る尋ねた。
「私は……地球人じゃないの?」
「ええ」
レイは言った。
「先ほど申しあげた通り、あなたは、ミルディック星の王家の娘、サリーネイル姫でございます」
「ミルディック星……?」
「実はあなたは、2ヶ月前にミルディック星を飛び出したのです。1人用の小型トラベルマシンに乗りこんで……」
おそらく、とレイは言った。
「王様が決めた結婚相手から逃げたかったのでしょう」
「結婚相手……?」
ちょ、ちょっと待って。
私には結婚相手がいたの??
「ね、ねえ」
私は慌てて問いかけた。
「結婚相手から逃げたかったって、どういうこと?」
「それはですね」
レイは言った。
「見てしまったんですよ」
「え?」
「お嬢様の瞳、自分でどういう色か、もちろんご存知ですよね」
「う、うん、ブルーっぽいと思うけど……」
「それは、ミルディック星の若者の間で流行していた『フォーチュン・コンタクト』というものです」
え……?
「装着するのも取り外すのも、専用の機械がないと無理という不便さゆえに流行はすたれていってしまいましたが……」
でも、とレイは言った。
「王家の世界に生まれ、カゴの中の鳥のように窮屈に生きてきたお嬢様は楽しくて仕方がなかったようです」
カゴの中の……鳥……
「お嬢様はいつも、これで運命の人を見つける、と言っていました」
そして、とレイは言った。
「ある日、お嬢様は、王が決めた結婚相手との相性を見てしまったのです」
「あっ……」
スパン!――
やっぱり、私の失った記憶は、レイと話すことによって確実に戻り始めている。

