スパン!――
「えっ!?」
スパン!――
スパン!――
「な、なんなの!?」
な、何!?
この感覚は、いったい何!?
私は、目を見開いたまま、固まってしまった。
なぜなら、いきなり私の脳内におびただしい量の情報が流れこんできたからだ。
『スパン! スパン!』と、まるで、大きなジグソーパズルのピースが一瞬で合わさるように、私の脳内は変化し始めていた。
そして、それがなんなのかはすぐに分かった。
記憶。
そう。
私が失ったであろう記憶が、ものすごい速さで戻ってくるのが分かったからだ。
「あっ……」
私は言葉が出なくなった。
信じられない。
でも、少しずつ、少しずつだけど、確実に私が忘れていたことが脳内に戻り始めていた。
「お、お嬢様!」
ガシッ!
そして、レイは慌てて私の肩を掴んだ。
「記憶が戻ったのですか……?」
「え、ええ……」
私は、目を見開いたまま、つぶやいた。
「レイ・ジョーナ・イリンハーツ……それが……レイの本当の名前だよね……」
「良かった……」
レイは、ホッと胸を撫で下ろした。
「おそらく、さっき頭を打ったショックが巧を奏したようですね。まさに不幸中の幸いといったところです」
「私は……記憶を失ってたの……?」
「そうですよ。でも、もう大丈夫ですよ」
「ね、ねえ……」
私は、動揺を隠せないまま尋ねた。
「私って……誰?」
「あなたは……」
レイは言った。
「サリーネイル姫ですよ」
スパン!!!!――――
「あっ……」
また私の記憶が戻ってきた。
レイと話すたびに、ひとつ、またひとつと記憶が戻ってくる気がする。
『サリーネイル』
思い出した。
それが、私の本当の名前だ。

