【短編】君の数字










キキィィィィィィィィィ!!!!――――





車の急ブレーキの音が、辺り一面に響き渡った。




ガン!!――




い、痛い!



次の瞬間、私の頭に衝撃が走った。

おそらく、どこかにぶつかったのだろう。


あぁ。

私は死んだんだ。

私は……



…………



あれ……?

私……生きてる……?


頭に少し痛みがあるけど、全然、あとはどこも痛くない……


「あれ……?」


私は、自分が無事なことにすぐに気がついた。


「あっ……」


そして私は、もう1つのことに気がついた。


「レ、レイ……?」


そう。

そこには、レイがいた。

道路に横たわりながら、私を抱き抱え守ってくれていたのは、レイだった。


「大丈夫ですか、お嬢様? 地面で少し頭を打ちましたか?」


レイは、やさしい笑顔を浮かべ、私の髪を撫でてくれた。

アスファルトにぶつけた頭をいたわるように、

痛みを少しでも取り除くかのように、

やさしく繊細に髪を撫でてくれていた。

そして、続けて私の目に映ったのは、顔や手の甲に、痛々しい擦り傷を負っているレイの姿だった。


「レイ……」


あぁ。

ついさっき、あんなひどい言葉を投げかけたばかりなのに。

レイは、私を追いかけてきてくれたんだ。


「レイ……」



ホロリ――

ホロリ、ホロリ――



私は、血がにじんでいるレイの擦り傷を見て涙が止まらなくなった。

あんなに、ナルシストのレイなのに。

髪型が決まらなかったり、吹き出物が1つ出ただけで、あんなに落ち込んでいたのに。

顔に傷がつくことは、おそらく1番耐え難いことだろうに。

レイは、ただただ、笑顔で私の安否を気づかってくれている。


あぁ。

ありがとう。

ありがとう、レイ。



ホロリ――

ホロリ、ホロリ――



ダメだよ。

やっぱり涙が止まらないよ。

どんどん、どんどん、溢れてくるよ。