【短編】君の数字



この人が、私の結婚相手になるのかな?

この人が、運命の人なのかな?


先が分からないから、恋愛は楽しいんだ。

だから、もっと相手のことを分かろうとか、相手に好きになってもらおうとか、努力するんだよね。


「なのに……」


なのに、私は数字ばっかり気にしてしまう。

数字が悪ければ、すぐに恋愛対象から外してしまう。

だってそうでしょ。

数字が低くても、これから高くなっていくかもしれない。


遠藤くんの中身がいいのは分かってる。

やさしいとこ。

勉強も部活も真面目なとこ。

笑うとおもいっきり手を叩くかわいいしぐさ。

この高校生活で、遠藤くんのいいところは、いっぱいいっぱい知っている。


――でも。


私は、数字だけで、とっさに判断してしまった。


「あぁ……」


嫌いだ。

私は、こんな自分が大嫌いだ。

私は、こんな自分が好きになれない。


あぁ、そうだ……

そういえば、昔、誰かに言ったことがある。

『自分を好きになりなさい』

と。

人には偉そうに、こんなことを言っておきながら、私は自分が大嫌いだ。


「ごめんなさい……」


誰もいない下駄箱の端。

別に誰に言うわけでもなく、私は、一言だけそうつぶやいた。

ひょっとしたら、今まで私が数字を計った人たちに対してかもしれない。


ごめんなさい。

ごめんなさい。


心の中で、何度も何度もそうつぶやいていた。



そして、気づくと私は校門の前までトボトボと歩みを進めていた。


――すると。