【短編】君の数字



私は、下駄箱の扉を急いで開け始めた。


すると、


「なあ、サヤカ」

「ん?」


私は、下駄箱から靴を出しながらクルッと振り返った。


「あっ!」


すると、そこにいたのは、バスケ部の遠藤くんだった。



「あのさ」


遠藤くんは、髪をポリポリとかきながら言った。


「最近、噂になってるけど、おまえ、イケメン大学生と付き合ってるって本当?」

「ふぇ?」


私は、一瞬、声が裏返ってしまった。

遠藤くんが誰のことを言っているのか、すぐに分かったからだ。

レイ。

もちろん、それはレイのことだった。

どうしよう。

どうしよう。


「う、ううん……」


私は、急いで首を横に振った。


「べ、別に付き合ってないよ。あの人は、私の家庭教師」


実はね、と私は笑いながら言った。


「大学受験も近いから、帰りに図書館で勉強教えてもらってるの。うちでやればいいんだけど、部屋が狭いから図書館のほうが便利がいいんだ」

「なんだ、そうだったのか」

「うん、そうだよ」


私は、自分でも驚くぐらいスラスラと嘘をついていた。

なんだろう。

遠藤くんには、レイが彼氏だと思われたくない。

そういう気持ちがあったからだ。